賞与支払届
賞与支払届(しょうよしはらいとどけ)とは、会社などの事業主が従業員に賞与を支給したときに、支給額などを日本年金機構(健康保険組合に加入している場合は健康保険組合にも)へ届け出る書類である。正式名称は「健康保険・厚生年金保険 被保険者賞与支払届」。届け出た内容をもとに、賞与にかかる健康保険料・厚生年金保険料の基準となる標準賞与額が決まる。
要点
- 賞与を支給したら、支給日から5日以内に提出する。
- 賞与から1,000円未満を切り捨てた額(標準賞与額)に保険料率を掛けて保険料を計算し、会社と従業員が半分ずつ負担する。
- 協会けんぽ(東京都)・40歳未満の従業員に賞与50万円を支給した場合、健康保険・厚生年金保険の保険料は会社・本人それぞれ70,950円(計算例)。
- 支給予定月に賞与を出さなかったときは、代わりに「賞与不支給報告書」を提出する。
法的根拠
| 法令 | 主な内容 |
|---|---|
| 健康保険法 第45条 | 標準賞与額の決定(1,000円未満切り捨て、年度の累計額573万円が上限) |
| 健康保険法 第48条 | 事業主による賞与額に関する事項の届出 |
| 厚生年金保険法 第24条の4 | 標準賞与額の決定(1,000円未満切り捨て、1か月あたり150万円が上限) |
| 厚生年金保険法 第27条 | 事業主による賞与額に関する事項の届出(70歳以上の使用される者を含む) |
対象となる賞与
賞与支払届の対象となるのは、賃金・給料・手当・賞与など名称を問わず、労働の対償として受けるもののうち、年3回以下支給されるものである。夏季手当・年末手当・期末手当・もち代などの名称で支給されるものや、役員賞与、自社製品などの現物で支給されるものも含まれる。
- 年4回以上支給されるものは賞与ではなく、毎月の報酬(標準報酬月額)の対象となる。
- 結婚祝金など、労働の対償とみなされないものは対象外である。
提出の期限・提出先・方法
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 提出する人 | 事業主 |
| 期限 | 賞与の支給日から5日以内 |
| 提出先 | 日本年金機構の事務センターまたは管轄の年金事務所(健康保険組合に加入している場合、健康保険の届出は健康保険組合に確認) |
| 方法 | 電子申請、電子媒体(CD・DVD)、郵送、窓口持参 |
| 添付書類 | なし |
日本年金機構は、登録されている賞与支払予定月の前月に、従業員の氏名などを印字した届出用紙を事業所へ送付している。印字されていない従業員がいる場合は手書きで追記し、賞与を支払わなかった従業員の欄には斜線を引く。
同じ月に2回以上賞与を支払った場合は、その月に支払った賞与をすべて合算して届け出る。
標準賞与額と上限
標準賞与額は、実際に支給した賞与(税引き前の総支給額)から1,000円未満を切り捨てた額である。標準賞与額には次の上限がある。
| 保険 | 上限 | 上限の数え方 |
|---|---|---|
| 健康保険(介護保険・子ども・子育て支援金を含む) | 年度の累計で573万円 | 毎年4月1日から翌年3月31日までの累計 |
| 厚生年金保険 | 1か月あたり150万円 | 同じ月に2回以上支給したときは合算 |
健康保険で年度の累計が573万円を超える場合、同じ会社で1年度を通して加入していれば、573万円になるよう自動で調整される。年度の途中で転職などがあり、加入期間が複数ある場合は、従業員の申し出にもとづいて「健康保険 標準賞与額累計申出書」を提出する。
保険料の計算と負担
賞与にかかる保険料は、標準賞与額に各保険の料率を掛けて計算し、事業主と被保険者が半分ずつ負担する。被保険者の負担分は、賞与を支給するときに賞与から差し引くことができる。
| 保険 | 料率(令和8年度・協会けんぽ東京都の例) | 対象 |
|---|---|---|
| 健康保険 | 9.85% | 全員 |
| 介護保険 | 1.62%(全国一律) | 40歳から64歳までの人 |
| 子ども・子育て支援金 | 0.23% | 全員(令和8年4月分の保険料から) |
| 厚生年金保険 | 18.3%(全国一律) | 70歳未満の被保険者 |
- 健康保険の料率は都道府県ごとに異なり、健康保険組合に加入している場合は組合ごとに異なる。
- 子ども・子育て支援金は、令和8年4月分の保険料から、毎月の給与だけでなく賞与にもかかる。健康保険料と合わせた料率で計算して折半する。
- 賞与にかかる保険料は、毎月の保険料と合算され、賞与を支払った月の翌月に送られる納入告知書で通知される。納付期限はその月の末日である。
会社と本人の負担(計算例)
前提:協会けんぽ・東京都、40歳未満(介護保険なし)、賞与500,000円、令和8年12月支給
| 項目 | 計算 | 合計 | 本人負担 | 会社負担 |
|---|---|---|---|---|
| 標準賞与額 | 500,000円(1,000円未満なし) | ― | ||
| 健康保険+子ども・子育て支援金 | 500,000円 ×(9.85%+0.23%) | 50,400円 | 25,200円 | 25,200円 |
| 厚生年金保険 | 500,000円 × 18.3% | 91,500円 | 45,750円 | 45,750円 |
| 合計 | 141,900円 | 70,950円 | 70,950円 | |
40歳から64歳までの従業員の場合は、これに介護保険料(500,000円 × 1.62% = 8,100円、本人・会社それぞれ4,050円)が加わる。賞与からは、このほか雇用保険料と源泉所得税も差し引く(賞与支給の業務手順、賞与の源泉徴収を参照)。
注意が必要なケース
| ケース | 保険料 | 賞与支払届 |
|---|---|---|
| 資格取得月(入社した月)に支給した賞与 | かかる | 必要 |
| 資格喪失月(退職した月)に支給した賞与 | かからない(同じ月に取得と喪失がある場合を除く) | 必要(健康保険の年度累計に含めるため) |
| 育児休業等で保険料が免除されている期間に支給した賞与 | かからない | 必要(年度累計に含めるため) |
| 70歳以上の人(厚生年金保険の被保険者ではない) | 厚生年金保険料はかからない | 必要(70歳以上被用者賞与支払届。同じ様式) |
| 賞与支払予定月に誰にも賞与を支給しなかった | ― | 代わりに「賞与不支給報告書」を提出 |
- 賞与支払予定月の翌月までに届出がない場合、日本年金機構から翌々月に催告状が届く。
- かつて提出していた「被保険者賞与支払届総括表」は、令和3年3月に廃止された(電子媒体で提出する場合の「電子媒体届書総括票」は引き続き必要)。
よくある誤解
- 「賞与支払届は、源泉所得税の手続き」
- 賞与支払届は、健康保険・厚生年金保険の手続きである。源泉所得税は届出ではなく、税務署に納付する(賞与の源泉徴収を参照)。雇用保険料も、賞与支払届とは別に、毎年の労働保険の年度更新で精算する。
- 「保険料がかからない人は届け出なくてよい」
- 退職月の賞与や育児休業中の賞与のように保険料がかからない場合でも、健康保険の年度累計に含めるため、届出は必要である。
- 「賞与を払わなかった月は何もしなくてよい」
- 日本年金機構に登録している賞与支払予定月に支給しなかった場合は、「賞与不支給報告書」の提出が必要である。
関連用語
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出典
- 日本年金機構「従業員に賞与を支給したときの手続き」(2026年10月6日更新)
- 日本年金機構「厚生年金保険の保険料」(2026年9月30日更新)
- 全国健康保険協会「令和8年度の協会けんぽの保険料率」
- 全国健康保険協会「令和8年3月分(4月納付分)からの健康保険・厚生年金保険の保険料額表(東京都)」(PDF)
- 全国健康保険協会「協会けんぽの子ども・子育て支援金率について」
- 厚生労働省・こども家庭庁「子ども・子育て支援金に関するQ&A」(令和8年2月12日、PDF)
- 「健康保険法」「厚生年金保険法」(e-Gov法令検索)