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年末調整

提供: アドミンペディア

年末調整(ねんまつちょうせい)とは、会社などの給与の支払者が、従業員に毎月の給与や賞与から天引き(源泉徴収)してきた所得税の合計額と、その年の給与総額に対する本来の年税額とを比べ、差額を精算する手続きである。差額は12月に支払う給与(または賞与)で還付または追加徴収するのが一般的である。

英語では year-end tax adjustment と訳されることが多い。

概要

毎月の源泉徴収税額は源泉徴収税額表によって概算で計算されるため、次のような理由で年間の正しい税額とずれが生じる。

年末調整を行うと、給与所得者の多くは確定申告をしなくても1年分の所得税の精算を終えられる。

法的根拠

日本の所得税は、納税者が自ら税額を計算して申告する申告納税制度を原則としている。一方、給与所得については、支払者が給与から所得税を差し引いて国に納める源泉徴収制度がとられており、年末調整はこの源泉徴収の仕組みの中で1年分の税額を確定させる手続きとして定められている。

法令等 主な内容
所得税法 第190条 年末調整の実施(給与の支払者が、その年最後の給与を支払う際に年税額との過不足を精算する)
所得税法 第191条・第192条 過納額の還付、不足額の徴収
所得税法 第194条 給与所得者の扶養控除等申告書の提出
所得税法 第198条 給与所得者の保険料控除申告書の提出
所得税法 第85条 扶養親族などに当てはまるかどうかの判定時期(原則としてその年の12月31日の現況)
所得税基本通達 190-1 年の途中で年末調整を行う場合(退職・非居住者となった場合など)
災害減免法 第3条 災害を受けた人の源泉所得税の徴収猶予・還付

対象となる人・ならない人

年末調整の対象となるのは、年末調整を行う日までに給与所得者の扶養控除等申告書を提出している人(源泉徴収税額表の甲欄が適用される人)である。

12月に年末調整を行う人

  • 1年を通じて勤務している人
  • 年の途中で就職し、年末まで勤務している人(青色事業専従者を含む)

ただし、次の人は対象とならない。

  • その年に支払うことが確定した給与の総額が2,000万円を超える人
  • 災害減免法により、その年の給与に対する源泉所得税の徴収猶予や還付を受けた人

年の途中で年末調整を行う人

次のいずれかに当てはまる人は、12月を待たず、退職などの時点で年末調整を行う。

  1. 海外の支店への転勤などにより、非居住者となった人
  2. 死亡により退職した人
  3. 著しい心身の障害のために退職した人(退職後、その年に再就職して給与を受ける見込みのある人を除く)
  4. 12月に支給される給与の支払を受けた後に退職した人
  5. パートタイマーなどとして働いていた人が退職した場合で、その年に支払を受ける給与の総額が136万円以下の人(退職後、その年に他の勤務先から給与を受ける見込みのある人を除く)

これ以外の理由で年の途中に退職した人は、退職した会社では年末調整を行わない。再就職先で前職分を合算して年末調整を受けるか、本人が確定申告を行う。

2か所以上から給与を受けている人

扶養控除等申告書は1か所にしか提出できない。年末調整はその提出先(主たる給与の支払者)だけで行い、もう一方の給与(従たる給与。乙欄適用)は年末調整の対象とならない。従たる給与がある人は、一定の場合に確定申告が必要になる。

扶養親族などの判定時期

配偶者や扶養親族に当てはまるかどうか、年齢区分(特定扶養親族・老人扶養親族など)は、原則としてその年の12月31日の現況で判定する。年の途中で死亡した親族は、死亡した時点の現況で判定する。そのため、年の途中で結婚した配偶者や生まれた子も、12月31日時点で要件を満たしていればその年の控除の対象となる。

年の途中で年末調整を行う場合(退職時など)は、その年末調整を行う日の現況で判定する。

対象とならない人や、年末調整後に控除の追加がある人は、必要に応じて本人が確定申告を行う。

よくある誤解

「還付されると得をした」
還付金は、毎月の源泉徴収で多めに納めすぎていた税金が戻ってくるものである。年間の税額が減ったわけではない。逆に追加で徴収された場合も、損をしたのではなく、不足していた分を納めただけである。
「年末調整をすれば確定申告は一切いらない」
医療費控除やふるさと納税(ワンストップ特例を使わない場合)、住宅ローン控除の初年度は年末調整では適用できず、本人が確定申告を行う必要がある。給与収入が2,000万円を超える人や、給与以外の所得が20万円を超える人なども確定申告が必要である。
「扶養に入るかどうかは申告書を出した時点で決まる」
判定は原則として12月31日の現況で行う。申告書を出した後に配偶者や扶養親族の収入が増えて要件を外れた場合は、申告書の内容を訂正する必要がある。
「パートの収入が103万円以内なら扶養に入れる」
所得税の扶養親族の要件は税制改正で変わっており、令和8年分は給与収入136万円以下(合計所得金額62万円以下)である。また、社会保険の扶養の基準(年収130万円など)とは別の制度であり、混同しないよう注意が必要である。
「年末調整は会社が任意で行うサービス」
年末調整は所得税法で定められた給与の支払者の義務であり、対象となる従業員について行わなければならない。

年末調整で精算できるもの・できないもの

区分 主な項目
年末調整で適用できる 基礎控除、配偶者控除・配偶者特別控除、扶養控除、特定親族特別控除、障害者控除、寡婦控除、ひとり親控除、勤労学生控除、社会保険料控除、小規模企業共済等掛金控除(iDeCoを含む)、生命保険料控除、地震保険料控除、住宅借入金等特別控除(2年目以降)、所得金額調整控除
年末調整では適用できない(確定申告が必要) 医療費控除、寄附金控除(ふるさと納税。ワンストップ特例を使わない場合)、雑損控除、住宅借入金等特別控除(初年度)

年末調整で使う主な申告書

従業員から次の申告書を提出してもらい、記載内容と添付書類(控除証明書など)を確認する。

  1. 給与所得者の扶養控除等申告書(翌年分)
  2. 給与所得者の基礎控除申告書 兼 配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書(令和7年分以後は特定親族特別控除申告書を含む)
  3. 給与所得者の保険料控除申告書
  4. 給与所得者の(特定増改築等)住宅借入金等特別控除申告書(該当者のみ)

実務の流れとスケジュール

年末調整の一般的な流れは次のとおりである。詳しくは年末調整の業務手順を参照。

時期 作業
10月〜11月 申告書の配布、従業員への記入案内
11月〜12月上旬 申告書・控除証明書の回収と内容チェック
12月 年税額の計算、過不足額の算出、12月の給与または賞与での精算
翌年1月10日 12月分の源泉所得税の納付(納期の特例を受けている場合は1月20日)
翌年1月31日 源泉徴収票の交付・税務署への提出、給与支払報告書の市区町村への提出、法定調書合計表の提出

年税額の計算手順(概略)

  1. 1年間の給与・賞与の総額を集計する。
  2. 給与所得控除後の給与等の金額を求める(「年末調整等のための給与所得控除後の給与等の金額の表」を使う)。
  3. 所得金額調整控除を差し引く(該当者のみ)。
  4. 各種所得控除の合計額を差し引き、課税給与所得金額(1,000円未満切り捨て)を求める。
  5. 税率を掛けて算出所得税額を求め、住宅借入金等特別控除を差し引く。
  6. 復興特別所得税(102.1%)を加え、年調年税額(100円未満切り捨て)を求める。
  7. 年調年税額と、1年間に源泉徴収した税額との差額を精算する。

令和8年分(2026年)の主な変更点

※この節は2026年11月時点の情報である。実務では必ず国税庁の資料で最新情報を確認すること。

令和8年度税制改正により、令和8年12月1日から基礎控除の引上げなどが施行された。令和8年分以後の所得税に適用されるため、令和8年分の年末調整は改正後の金額で年税額を計算する。11月までの源泉徴収は改正前の税額表で行われているため、改正による差額は年末調整でまとめて精算される。

主な改正内容

項目 改正前 令和8・9年分(改正後)
基礎控除(合計所得金額132万円以下) 95万円 104万円
基礎控除(合計所得金額132万円超489万円以下) 88万円・68万円 104万円
基礎控除(合計所得金額489万円超655万円以下) 63万円 67万円
基礎控除(合計所得金額655万円超2,350万円以下) 58万円 62万円
給与所得控除の最低保障額 65万円 74万円
扶養親族・同一生計配偶者の所得要件 合計所得58万円以下(給与収入123万円以下) 合計所得62万円以下(給与収入136万円以下)
配偶者特別控除・特定親族特別控除の所得要件の下限 58万円超 62万円超
勤労学生の所得要件 合計所得85万円以下(給与収入150万円以下) 合計所得89万円以下(給与収入163万円以下)
一般生命保険料控除の上限(23歳未満の扶養親族がいる場合) 4万円 6万円
  • 給与収入のみの人の場合、基礎控除104万円と給与所得控除74万円の合計で、給与収入178万円までは所得税がかからない計算になる(いわゆる「178万円の壁」)。
  • 改正により新たに扶養親族などに当てはまる人がいる場合は、扶養控除等申告書の「異動月日及び事由」欄に「令和8年12月1日改正」などと書いて提出してもらう。
  • 令和8年11月30日以前に最後の給与が支払われた人(海外赴任による非居住者、死亡退職者など)には改正後の控除が年末調整で反映されないため、原則として確定申告で対応する。
  • 改正後の源泉徴収税額表は、令和9年1月1日以後に支払う給与から適用される。

実務上の注意点

  • 申告書の回収遅れ:年末調整のスケジュールが遅れる最大の原因である。回収期限を早めに設定し、未提出者に催促する。
  • 扶養親族の所得の確認:パートやアルバイトで働く配偶者や子の収入見込みを確認する。令和8年分は所得要件が変わるため特に注意する。
  • 中途入社者の前職分:前職の源泉徴収票を回収し、給与と税額を合算して計算する。
  • 電子化:年末調整申告書のクラウドサービスや、国税庁の「年調ソフト」を使うと、回収とチェックの手間を減らせる。
  • 住民税との関係:年末調整の結果は給与支払報告書を通じて翌年度の住民税の計算にも使われる。住民税では一部の改正の適用時期が所得税と異なる。

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